オープンスタジオ第44回
今回は過去に開催した神奈川県大和市のセブンスディレクションスタジオでの開催となります。
このスタジオは敷地内にスタジオ専用の建物を増築した例で、建物ごと当社で設計施工したケースです。
天井高3.9m、約16帖のメインスタジオにドラムセットを5セット配置、オーナーのこだわりが余すことなく詰められたプライベートスタジオです。
過去の開催以降、このスタジオのような建物を造りたい、という問い合わせも多く、当社としても思い入れの多いスタジオです。
スタジオを検討中の方は是非お越しください。
開催日時
2017年 9月23日(土) 10:00~17:00
※会場は個人住宅のため予約制とさせて頂いております。
ご住所等の詳しい情報に関しましてはお電話・メール等でお問合せください。
当スタジオで2回目のOpen Studioを開催して頂いてから半年ほどが経ち、お陰様で興味を持ってくれた友人が数人遊びに来てくれました。そこで、遅ればせながらOpen Studio当日の感想やこれまでに思ったことをお伝えします。
当日は、具体的にスタジオ作りを検討されている方から遮音性能に興味を持つ方、住宅メーカーの方まで様々な目的を持った方にお越し頂きました。そして、その全員から「どうしてAEさんに決めたんですか?」というご質問があったことが印象に残っています。
その答えとしては、「検討を始めた2010年当時、候補にした10社ほどの防音業者さんの中で、一番具体的な価格と遮音性能の提案をしてくれたから」とお答えしたと記憶しています。
言葉にするとシンプルな理由ですが、実際の検討段階では各社からの提案やその口調・こちらの想いとの温度差など、数字などで表しきれない私との感覚的なマッチングも考慮した上で時間をかけてのことでした。それを思い返してみた時、この質問をされた皆さんのお気持ちは防音室作りの不安の表れだったのかも知れないと思い、もっと丁寧にお話し出来れば良かったかなと反省しまして、それが今回メッセージを書こうと思ったきっかけです。
私のスタジオは、手前味噌ですが遮音性能から見ても満足度から言ってもおそらくかなりの成功例だと思っています。しかし、それは周囲の環境や予算や施工時期など、様々な条件・要素が絡み合った結果であり、誰でもAEさんに頼みさえすれば同じ性能と満足度が得られるものでは無いと思います。では、そういう事例をお見せすることにどんな意味があるのか、オーナーとしての見解を述べさせて頂くと、
①「夢を現実的に感じられる」
②「遮音性能という数字でしか表せなかったものを体感できる(不安を取り除いて欲しい)」
③「自分の環境に照らし合わせて考える機会になる」
という3点です。
①は、思い描いている「防音室を手に入れたい」という夢が、ちゃんと実現するんだという実感を得てもらいたいということで、これは雑誌などで紹介されている施工事例からも感じ取れることだとは思いますが、やはりフルスケールでの体験に勝る物はないと思います。
②は、実際に自分のスタジオが完成する最後の最後まで不安でたまらなかったことで、スタジオ作りの検討を始めた2010年当時にこの機会があったらきっと何箇所も見学して不安や疑問を解消したかったと思うのです。条件が違えば同じ性能にはならないと書きましたが、それでも不安や疑問を抱えたままでネットや誌面の情報だけを頼りに悶々としたり疑心暗鬼になったりするよりは、一足飛びで余計な心配を払拭できると思います。
人によって表現は様々ですので、遮音性能的に同じ値であっても「かすかに聴こえる程度」「音漏れはわずか」「演奏していることは分かるが気にならない」「全然聴こえない・気が付かない」といった色々な言葉で表されているのを目にします。それに、同じ値であっても帯域別の構成が異なると漏れ方が違うというのはスタジオを作っていく中で初めて分かったことでしたし、そういう様々な性能の中の一例として見て頂けたら面白いのではないかと思っています。
③は、Open Studioをはじめとしてこれまでスタジオに遊びに来てくださった方とのお話しの中で感じたことです。ドラム以外の演奏をされる方も当然いますし、使い方の想定が違う方もいます。防音室・スタジオに対するイメージや求める物も思いの外色々ありますが、ある程度のイメージを膨らませている方にとっては、そういう理想や想像と現実とを結び付けることにすごく意義を見出してくださっているように思えるのです。
私のスタジオは「ドラム演奏をメインとして、5~6人編成のバンド演奏も時々ある」という想定で響きを作ってもらいましたので、私にとっては理想的な環境です。しかし、響きの評価というのは人それぞれで、手にする楽器によっても評価が違うものですから、これまでの印象としてドラムはもちろんアコースティック楽器の方に特に評判が良いように感じています。
コーラス隊などをやられている方には響きが足りないという感想を頂きましたし、ベーシストやギタリストからは貸しスタジオと音作りを全く変えなくてはいけなかったので最初は難しかったと言われたこともあります。天井が高い分容積も大きいので、普段貸しスタジオで使っているアンプではパワー不足でドラムの生音と全くバランスが取れなかったこともありました。ただ広ければ・残響が長ければ良いということにはならないわけで、せっかくのプライベート空間ですから「自分がメインに据えている楽器・機材にとって“ちょうど良い”」という所は何なのかということを考えて頂く機会にもして頂けるのではないかと思っています。
ただ、それはなかなか一度で感じ取れるものでもないのだろうと思いますので、気になった方がいらっしゃったら遠慮なく何度でも、次はご自分の楽器や気に入ったCDを持ってお越し頂ければと思っています。
AEさんからは、またここでOpen Studioを開催したいと言って頂いておりますので、また色々な方とお会い出来るのを楽しみにしております。
4年ぶりに、再びこちらでオープンスタジオを行いました。
敷地内にスタジオ専用の離れを建築という、ミュージシャンにとっては究極の夢ともいえる本件ですが、多くの方にお越しいただき、大変感謝しております。
約16帖の広さで天井高は3.9mというこのスタジオは、その大きさだけでもインパクトがありますが、その中にドラムセットを5セット組んでおり、オーナーの保田さんの強いこだわりを感じずにはいられません。
やはり皆さん、ドラムの音がどれくらい外に漏れるか気になりますので、まずは保田さんに中で叩いてもらい、その音がどれくらい減衰しているのかを聴いてもらいました。
数値でいうと、窓前でD’-70、外壁前でD’-75という値なのですが、実際に聴いてみると、外壁に耳をつけてようやく聴こえるというレベルで、「これで木造?」「これなら夜中でも大丈夫ですね」などと思い思いに感想をいただきました。
実際保田さんは「仕事を終えて帰ってきてから練習するので、気が付いたら2時、3時まで叩いていることもありますね。」といって笑い、気兼ねなく使用している様子が伺えました。
ドラムスタジオの隣には5.5帖のコントロールルームもあり、レコーディングしてすぐに編集、といったこともできるほか、普段はオーディオルームとしても活用しています。
ところでイベント中に私も叩かせていただいたとき、他のスタジオで叩いた音と明らかに違う感覚を抱いたことに気づきました。
それが何なのか考えると、保田さんがスタジオの響きに合わせ、ドラムをチューニングしていることに気づきました。
これまでと異なるのは、ドラムの音そのものではなく、部屋の響き方をも含めて総合的にチューニングしているという点で、叩いている本人も、周りで聞いている人も音に包まれている感じがするのです。
一般に吸音の多いデッドなスタジオでは、ドラムセットの周りでのみ音が鳴っており、あえて言えば客観的な聴こえ方がするのに対し、保田さんのスタジオでは空間を鳴り響かせているような印象です。
これも、4年という時間の中で保田さんが見出したご自身の音作りなのだと気づき、スタジオは造って終わりではなく、そこから長い時間をかけて楽しんでいくものということを再認識した次第です。
保田さんのご厚意により、またいずれこのスタジオでイベントを行わせていただくことになりました。
その際はまた案内を出しますので、今回来られなかった方も、是非一度お越し頂けたらと思います。
担当:アコースティックラボ 草階
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