Open Studio Vol.31

  • 2016.01.17 (日)
  • 栃木県小山市
  • NOTE-FAN MUSIC STUDIO

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2016年最初のオープンスタジオは栃木県小山市にて開催致します。

会場となるのはNOTE-FAN MUSIC STUDIOです
※公式サイトはコチラをクリック 

こちらは、日中ピアノ教室として使われていますが、
ドラム演奏も可能なD’-65等級以上の遮音性能を有しています。

ピアノ教室を主宰しつつ精力的に演奏活動をされている奥様と、
プロドラマーにレッスンを受けドラムに熱中されているご主人様。

元々ピアノ教室のために簡易的な防音はしてあったものの、
生ドラム導入やより良い響きのために全面改装しました。

スタジオ計画においては、
「ピアノにとってはライブな響きが好ましいけれど、ドラム演奏時はやや響きを抑えたい」
というテーマがありました。

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そこで楽器のレイアウトをゾーニングし、ドラム周辺の局所的な吸音計画で対応しました。

どちらも快適にお使い頂けているようで、お二人のご感想の一部を抜粋してご紹介します。

▶ご主人様
「1つ1つの音が明瞭に聴こえるので、バンドのアンサンブルもしやすいです。リハスタでは中々できなかった単純なフレーズの反復練習も時間を気にせずできますし、もうずっとここで叩いていたいくらいです。」

▶奥様
「響きが本当に気持ち良くて、ピアノ本来の鳴りが得られるんです。音色や響きがよくわかるようになったので、生徒も自然とタッチに気を遣うようになりました。」

ドラム・バンドスタジオだけでなく、ピアノ等のアコースティック楽器の部屋を検討されている方にも幅広く参考にして頂けるお部屋です。
会場の駐車スペースには限りがありますので、混雑を避けるため時間調整をさせて頂く場合があります。

ご興味ある方は是非下記連絡先までお問い合わせください。

 

■開催日程
2016年1月17日(日)
10:00~17:00

■開催場所
栃木県小山市
※会場アクセスはコチラをクリック

参加連絡先

協賛

NOTE-FAN MUSIC STUDIO

REPORT Vol.31

  • 2016.01.17 (日)
  • 栃木県小山市
  • NOTE-FAN MUSIC STUDIO

ライター西本勲氏によるレポート その1

第31回目のオープンスタジオが開催された栃木県小山市のNOTE-FAN MUSIC STUDIOは、小山駅から車で15分ほどの住宅地にあるピアノレッスンスタジオです。施主の若松健さん一家が暮らす木造住宅の1階に、専用の玄関と待合室、約16帖のレッスン室があり、ピアニストである奥様がそこでピアノ教室を主宰しています。

 

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2004年に建てられた木造2階建ての若松さん宅。右下のガラス扉が教室専用の玄関。

 

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ピアノ教室の待合室。正面に見える2枚の木製防音ドアの向こうがレッスン室。

 

新築時のレッスン室は、住宅メーカーによる簡易的な防音が施された空間でしたが、2014年に全面改装。生ドラムも演奏できる本格的なスタジオに生まれ変わりました。その改装を担当したのがアコースティックデザインシステムです。

注目すべきポイントは次の3点です。

・木造住宅のリフォームでも生ドラムの演奏が可能 
・ピアノとドラムが共存する空間として工夫された響き
・防音工事を行っても部屋の狭さを感じさせない設計

 

先述した通り、新築時は簡易防音だけのレッスン室でしたが、家の三方が道路に面しているほか、住宅地といっても密集度がそれほど高くないことから、ピアノを弾いても特に支障はなかったそうです。

 

そこではレッスンの他に、ご主人が趣味で電子ドラムを叩いて楽しんでいました。もちろん、当時の遮音性能では生ドラムの演奏は不可能です。それでもご主人は「電子ドラムでそこそこ満足していた」そうですが、憧れだったプロドラマー熊谷徳明さんのレッスンを2012年から受けるようになり、少しずつ意識が変わってきたといいます。

 

「レッスンではプロ仕様のドラムを使うので、音の強弱がとても豊かで、細かい音もはっきり聴こえます。それは楽器とスタジオの両方が相関してのことなんでしょうけど、自宅で電子ドラムを叩いているときにはそこまで意識が及んでいませんでした。そこで、もっと本格的に取り組むために生ドラムを叩ける環境を整えたいと思い始めたんです」


最初は「まさかそれが現実になるとは思っていませんでした」というご主人ですが、生ドラムを叩けるだけでなく、奥様がピアノを弾く空間としてのメリットも考えて、レッスン室の改装を決意します。

 

「せっかくグランドピアノを置いているのに、以前は大屋根を閉めて音を抑えてレッスンしていたんです。でも、ちゃんとしたスタジオにすれば、いつでも屋根を全開にして良いレッスンができます。もともと自分のドラムを持ちたいと思っていましたし、妻とピアノトリオのバンドをやりたいという夢もありました。そろそろいい歳にもなってきたので(笑)、奮起するなら今かなと思って決心しました」


ご主人は中学時代にドラムを始め、専門誌【リズム&ドラム・マガジン】を創刊号から読んでいるという熱の入れよう。その誌上で紹介されている自宅スタジオの事例をいくつも見ていたことから、業者の選定に際しては、アコースティックデザインシステム以外の選択肢は全く考えなかったそうです。計画時には何度も打ち合わせを重ねただけでなく、ドラム室の施工例をいくつも見学し、十分に納得した上で工事に入りました。

 

「やはりこれだけ投資するわけですし、良い部屋を作るにはいろんなところを見ておきたいですからね。結果、期待以上の部屋を作っていただくことができました」

 

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 レッスンルームに入るとヤマハのグランドピアノが鎮座。右奥に見えるのがご主人のドラムセット。

 

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ドラムセットは現スタジオ完成に合わせて購入したもの。造りつけのデスクと書棚で収納もすっきり。

 

ライター西本勲氏によるレポート その2

前回ご紹介したとおり、もともと簡単な防音しかされていなかったレッスン室を全面改装し、生ドラムも叩ける本格的な防音室としたことで、いつでもピアノの大屋根を開けて弾くことができるようになりました。しかし、楽器を演奏する部屋としては、音が外に漏れないというだけでは十分ではありません。楽器本来の音色を引き出すには、その部屋で音がどう響くかがとても重要になります。アコースティックデザインシステムが手がける防音室では、常にその点を重視した設計・施工が行われています。

NOTE-FAN MUSIC STUDIOのレッスン室は、ピアノ教室としての使用が主目的ですから、当然ピアノが心地良く響く部屋でなければなりません。住宅内に作る規模の部屋では響きにクセが出やすいため、まず部屋の寸法比を適切に定めます。その一環として、ここでは天井高を最大部分で2.7mに設定。これは後で述べる優れた居住性にも大きく貢献するポイントです。

さらに、出入口側の壁を少し斜めにすることで、よりクセのない響きを実現しています。
このことはレッスンにも良い影響を及ぼし、ピアノの響きが良くなったことで、生徒が自分から演奏のタッチに気を配るようになったそうです。

 

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天井高は最大で2.7m。グランドピアノの豊かな響きを体感できる空間です。

 

 

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 少し斜めに仕上げられた出入口側の壁。対向する壁との平行面をなくすことで定在波の顕在化の影響を抑え、クセのない響きを作っています。

その一方で、ご主人が叩く生ドラムの響きも考慮されています。大小のドラムとシンバルの集合体であるドラムセットを快適に演奏するには、ある程度吸音された状態で、それぞれの音がクリアに聴き取れる必要があります。ピアノを豊かに鳴らすことだけを考えると、ドラムを演奏するには響きすぎる空間になってしまうのです。

そこで、ピアノは手前、ドラムは奥というように部屋のゾーンを分け、奥に吸音パネルやカーテンを設置。床はカーペットで仕上げ、ピアノとドラムの両方にバランスの良い響きに調整しています。

「リハーサルスタジオで叩くドラムとは全然違いますね。とても響きが良くて、1つ1つのパーツが明瞭に聴こえます。ドラム専用の部屋にするなら、もっと吸音材を増やすことのなるのかもしれませんが、いろんな楽器との共存を考えると、今の状態がちょうどいいと思います。特にこの部屋はピアノ教室なので、吸音が強いとちょっと窮屈になってしまいますからね。でも、ここではピアノもドラムも自然体で演奏できます」

さらに、3年ほど前からはソプラノサックスも始めたというご主人。もちろん、この部屋なら、良い音で思う存分練習が可能です。

「ちょっと音楽理論を勉強してみたくて、その中でも興味のあったソプラノサックスを始めました。スピーカーで伴奏を流して、それに合わせて吹いたりしています。すごく楽しいです」

 

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 ドラムの背後に吸音パネルを設置。ピンポイントで効果的な吸音を行い、ドラム、シンバルの1つ1つがクリアに聴き取れる演奏環境を実現。

 

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 ドラム前方の壁にはカーテンを吊って吸音。ピアノを弾くときにはカーテンを引いて、壁を反射面に。

ライター西本勲氏によるレポート その3

既存の部屋を防音室にリフォームする場合、壁などを厚くすることによって元の部屋より多少なりとも狭くなってしまうのは避けられません。若松さんのご主人は、もともと雑誌でアコースティックデザインシステムの施工例を見ていたこともあり、「狭くなることは覚悟していました」といいます。

「工事の途中、両サイドの柱が立ったのを見た時点で“こんなに狭くなるんだな”って思ったんです。わかってはいたけれど、そういうものなんだなと。でも完成してみたら、以前の部屋よりそれほど狭くなった感じがしないことに気付きました。これは想像していなかったので、“おおっ”と思いましたね(笑)」

その大きな理由は、前回も触れた天井の高さにあります。天井を構造材(梁)の上まで広げ、床も下げることで最大2.7mの天井高を確保。これによって圧迫感を抑え、防音工事で部屋が狭くなったことを感じさせないという設計上の工夫です。また、露出した梁がデザイン上のアクセントにもなっているほか、屋外に面した窓から射し込む光も、開放感の演出につながっています。

 

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天井を梁の上まで広げたことによって生まれた開放感は格別。

 

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梁を活かした天井のデザインを間接照明で効果的に演出。照明器具の配線が目立たない工夫もポイントの1つです。

 

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写真右側が元の天井の高さで、ドアの下端が元の床の位置。部屋の天地が大きく広げられたことがよくわかります。

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 ここは以前掃き出し窓があったスペース。それを採光窓として活かしています。


建具や内装はナチュラルテイストを基本としており、ピアノ教室の生徒さんたちがリラックスしてレッスンに取り組めそうです。ご主人自身も「くつろげる場所にしたかった」とのことで、その希望通りの空間になりました。また、天井のLED照明のほか、壁にスポットライトも備えられ、ジャズバーのような雰囲気を楽しむこともできます。

 

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壁のスポットライトをつけると雰囲気が一変。ご夫婦に知人のベーシストを加えたピアノトリオで音楽活動もなさっています。

演奏だけでなく、音響機材にも詳しいご主人は、ボランティアでイベントなどのPAを担当することもあるほか、この部屋ではレコーディングも行っているそうです。オープンスタジオ当日もドラムに複数のマイクが立てられ、来場者の演奏をその場で録音して聴かせてくださったのですが、とてもクリアで生々しいサウンドに驚かされました。

ただ防音された部屋というだけでなく、音の表情や質感まで味わえる居心地の良い空間を作ったからこそ、このように幅広く活用することができる……。そのことを改めて実感させられる取材となりました。
 

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レッスン室内のスピーカーから音を鳴らすPA機材のほか、複数のマイクによる録音から楽曲の編集まで行える機材が揃っています。

 

 

昨年行われたリズム&ドラム・マガジン主催の誌上コンテストにエントリーする動画を、この部屋で撮影。
粒立ちの良いドラムサウンドに仕上がっています。

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